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執筆者の写真藤原亜美

所長の部屋『ゲスト:村岡悠司さん』


第14回目のゲストは、


村岡 悠司(むらおか ゆうじ)さん


村岡さん(以下、敬称略)は、秋田県仙北郡角館町(現仙北市)のご出身。大学進学を機に上京され、13年間首都圏で暮らしておられました。2015年に秋田へ戻り、インバウンド事業をおこなう会社へ就職。2017年に主な仕事先であった羽後町に移住され、2018年後に勤め先を退職後、2020年4月に「こどもと大人が『遊ぶように生きる』yado & kissa UGO HUBを開業されました。


今回は研究員の藤原亜美(秋田出身で神奈川県内の大学に通う1年生(NPO法人みらいの学校のインターン生)と一緒にインタビューしました。


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藤原)大学進学やファーストキャリアを選択される際、意識されたことについての質問です。

まずは進学された大学を教えてください。


村岡)学習院大学の文学部英米文学科でした。


所長)その大学や学部を選択された理由は何ですか。


村岡)一番は「東京に行きたい」という理由でした。当時「秋田には何もない」と感じていたから「都市部に出たい」と強く思っていました。都内の大学への進学を志望していましたが、この大学のこの学部といったピンポイントの志望はありませんでした。

強いて挙げれば心理学に興味があったこと、科目として英語が得意であったことから、学習院大学では文学部の心理学科を第一希望に、同学部の英米文学科を第二志望として受験し、英米文学科に進学しました。


所長)その後、大学生活を過ごす中で就職活動する時期を迎えたと思いますが、就職先や仕事をどのような基準で選んでいかれましたか。


村岡)大学時代は勉強よりも好きなことを優先していました。大学生活は楽しかったので正直、就職活動を面倒に感じていました。

大学祭の実行委員会に所属していたので、大学祭に全力を注ぎ終わると就活に移行する先輩を見て、わかりやすい切り替わりや流れも知っていましたが、何か違和感を抱いていました。3年生の後半になると同期も同じような流れで就活を始め、やりたい仕事が特に見つからないまま周りに流されるように自分も就活を始めました。

就活を始めるにあたりおこなった自己分析で「人の人生に関わりたい」という思いを見つけました。参加した企業説明会ではサービス業や接客業など、たくさんの会社の話を聞いて、会社訪問もしましたが、直感的に人材業界に面白さを感じ、その業界へ進むことを決めました。


藤原)ありがとうございます。

では続いて現在の事業「UGOHUB」の特徴を教えてください。


村岡)提供しているサービスは、レンタルスペース、宿泊、カフェの3つです。

レンタルスペースはフロアスペースやキッチン部分を含めたフロア全体、テーブルや販売スペースなど多様なレンタルのカタチが可能です。キッチンごとレンタルできますので、自分で調理した料理を提供する出店も可能です。都市部では少しずつ増えてきたスタイルですが、秋田では当店以外に数えるほどしかないスタイルです。ゲストハウスとカフェ、レンタルスペースを複合して運営するスタイルも特徴です。


藤原)詳しく教えていただきありがとうございます。これまで開催されたイベントで、一番印象的だったものを教えてください。


村岡)わたしがイベントを企画実施することはほとんどありません。スペースをレンタルする人がやりたいことを実現するためのレンタルスペースですから、ご相談された案件には基本「NOと言わない」と決めています。これまでたくさんのイベントがおこなわれ、初めて体験するイベントも多かったのでどれも印象的ですが、面白い反応が起こった出来事からお話すると、販売スペースを利用された方の焼き菓子が口コミで広がって販売数を伸ばすということがありました。同様に販売スペースを利用されていたパン工房さんがいたのですが、その焼き菓子愛から宣伝部長的に広報されるほどヘビーユーザーでした。その熱量を見て「コラボイベントができると面白そうですね」とお話したことがあり、実際にわたしを含めた三者で会う機会が生まれました。話の中で、ホテルで提供されるようなアフタヌーンティーを提供するイベントの企画実施が決まり、告知後すぐに予約が定員に達するほど大当たりして、当日は「またやってほしい」という参加者の声があるなど大盛況でした。その後、その焼き菓子は多方面で取り扱われ、今は引く手あまたになっています。偶然お話したことがカタチとなり、発展して広がったような反応が起きたこととして印象に残っています。


藤原)村岡さんが起業家の懸け橋になっていると感じました。

続いて、事業を通して感じられるやりがいを教えてください。


村岡)UGOHUBのコンセプトは「あらゆる人がやりたいときにやりたいことをやれる場所、空間、機会を提供する」です。先程「NOと言わない」というお話をしましたが、一度でもこの理念に反すると、UGOHUBは終わりだと思っています。「他ではできなかったけど、ここでようやく実現できた」という声を聞くことが嬉しくモチベーションになります。

実例をお話すると、お弁当屋に勤める方が「UGOHUBに出店すると目の前で美味しいという声が聞けることが嬉しい」とお話されていました。食べた人の感想を聞く機会が無い職業柄の潜在的な望みをUGOHUBが叶えることができているのではないかとわたしも嬉しくなります。このように、他ではできないことを実現できる場を提供できていることにやりがいに感じています。


藤原)できないことを可能にするUGOHUBならではの特徴がやりがいとなっていると感じました。

続いて、UGOHUBを通して作り出したい未来を教えてください。


村岡)UGOHUBは2020年4月にオープンしたのですが、コロナの感染拡大と同時期でした。準備段階では想像もしない出来事でしたので、もはや運命にすら感じています。明日何が起こるか分からない、コロナ禍以前とは世の中のルールも変化して、昨日までの常識が今日の絶対ではないことが現実社会で起っています。

振り切って考えると、明日の命がどうなるかわからない状態であれば、今を全力で楽しむといったことになるので、やりたいことをする毎日がとても大切であると思います。UGOHUBは、やりたいことを実現できる空間であり、その機会が提供できる毎日が自分のハッピーとなっています。UGOHUBを通じ「日々を大切にする」「やりたいことをやってみる」という、考え方になる人が増える世界にしたいです。


藤原)わたしは先を見ることを優先していましたので、今のお話で視野が広がる感覚を受けました。

続いて、秋田県や羽後町の企業ならではの良さを村岡さんの視点から教えてください。


村岡)地元企業の良さですか…

正直、あまり考えたことは無いですね。


所長)東京で働いた経験もあり、地方と都市部の違いなどから感じることはありますか。


村岡)相対的にみると、地方の企業は地域とのつながりが深いと感じます。勿論、都市部の会社でも地域との関係性はあると思いますが、勤めている会社の地域で暮らす人はとても少なく、ほとんどの人が会社のある地域とは別の地域で暮らしています。

逆に地方の会社では、ほとんどが会社と同じ地域か近隣地域で生まれ育ったり暮らしたりする人ですので、仕事だけではない暮らしや生活に根ざした情報共有やコミュニケーションが多いこと。これが地方企業の特徴ではないかと思います。


所長)都市部では、社会との接点は多くても地域との接点は少ないかもしれませんね。


藤原)都市部へ憧れていたというお話もありましたが、現在は地方で暮らし地域に根差した事業をおこなっておられますよね。地方で暮らしていく中で改めて感じた秋田県や羽後町の良さを教えてください。


村岡)当時と真反対な考え方になったのは、東京で暮らしたことで比較対象ができて選択肢を増やせたことです。イメージしていた東京での暮らしを五感で感じたことで、はじめて地元と比較できました。「田舎は空気が美味しい」など、良く聞くような言葉も、地元で暮らす中で感じることはなかったですが、東京から帰省して初めて「空気が美味しい」という感覚を得ることができました。地元で暮らす中にあった普通が、東京に出たことで良さと感じられたことも多く「生まれた時からの当たり前が実はハッピーだったのかもしれない」と少しずつ思うようになりました。東京で過ごした大学生活や社会人生活、海外旅行の経験も通じて、ようやく秋田の良さに気づいて戻ってきたという感じです。今も「秋田には何もない」という言葉を聞くことはありますが、都市部の暮らしを五感で感じることで初めて地元の良さに気づくことができると思います。それを経験して都市部を選ぶ人もいますが、その選択は決して悪いことではありません。ただ比較対象を得ないまま「何もない」と言うことはもったいないと思っています。地方は若者流出が続いているため、若者を出さないような施策も検討・実施されていますが、それが逆効果になることもあるのではないかと思っています。地元とは違う暮らしや文化に触れたことで、はじめて地元の良さや地元で暮らす選択肢を持てるのではないかと考えています。


藤原)わたしも帰省した際に空気やお米が美味しいと感じましたので、共感できる部分が多いお話でした。

続いて、わたしのような学生に向け、学生時代に経験しておいたほうが良いことなどアドバイスをいただけますか。


村岡)万人が経験しておくべき経験はないと思いますから、自分がやりたいことをやってみることが大切だと思います。

藤原さんは今、やりたいことはありますか。



藤原)とにかくたくさんの経験がしたいです。現在はリポーター活動や、これまで経験のない体育系部活動のマネージャーをしています。


村岡)やりたくないことを無理にするのではなく、自分がやりたいことをしているので、それで良いと思います。

好きでのめり込んだ経験やそこで出会った人は全く無駄にならず、その後の何かで生きてくると思います。時間と体力の許す限りやりたいことは全部経験してみるべきだと思います。


藤原)ありがとうございます。これからもたくさんのことに挑戦していきたいです。

では最後に、これまでの経験を振り返り、今の若い世代へメッセージをお願いします。


村岡)学生時代は時間に比較的融通が利くので、時間を持て余すことなく少しでも興味が湧いたことは絶対にやった方がいいと思います。

今はスマホの画面を押せば簡単に参加申込みできる時代ですが、自分の興味に踏み出せない学生も多いのではないかと感じています。

藤原さんに質問ですが、その一歩目を踏み出せない学生に対して、我々世代がどのようなアプローチするとその一歩が踏み出せるようになると思いますか。


藤原)経験のある大人からみると些細な事でも、学生は大きなことと感じることもあるため、一歩踏み出すには周りからの声掛けや後押しがあるといいのではないでしょうか。


村岡)大人と学生の距離感を縮める声掛けと、その機会をシンプルに増やしていくことですね。


所長)藤原さんに対する村岡さんの質問は、わたしも興味がある部分でした。

藤原さんがリポーターや部活のマネージャーを始めたことに、村岡さんが「いいね」とお話されていたことがとても印象的で、それが村岡さんの質問の答えに近いと感じました。

わたしは村岡さんのようにシンプルに「いいね」と学生に伝える大人たちが少ないのではないかと感じています。藤原さんがお話されたように、傍から見れば些細なことでも本人にとってはものすごく大きなことで、未知な世界に踏み出しにいくような感覚でしょうから、一歩踏み出してもらうことを難しいと思っています。わたしが関わるインターンシップでは「失敗できる機会です」と伝えています。失敗しても責められない精神的安心感が得られる機会だと捉えてもらえると踏み出しやすくなるのではないかと思います。


村岡)確かに「いいね」と言うのは無責任でいいと思います。責任を取る立場じゃない他人だからこそ「いいね」というべきですね。世代も関係なくみんなが「いいね」と言い合える世の中になると、極論として全部解決してハッピーな世の中になるかもしれませんね。「いいね」「ぜひやってみよう」「楽しもう」というポジティブな言葉が口癖になるといいですね、


所長)SNSでは簡単に「いいね」を押すのですが、経験のある大人が経験の無い若者に直接「いいね」と伝えることに難しさがあるのかもしれないですね。


村岡)良かれと思って心配する言葉や行為もありがたいことではありますが、まずは安心感が得られる「いいね」という言葉が先にあるといいですね。その上で心配事を伝えていく。そこから「わたしのこれを貸そうか」「こういう人知っているよ」となど不安を取り除くような声掛けができると最高だと思います。


藤原)本日はありがとうございました。インタビューを通して、社会に出ている方の視点で様々なことを知ることが出来ました。本当に貴重な機会だったと感じています。改めまして、本当にありがとうございました。



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村岡さんお忙しいところインタビュー対応いただきありがとうございました。


村岡さんが営む『yado & kissa UGO HUB』の情報については以下から確認できます。


ホームページ:https://www.ugohub.jp/


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